日経サイエンス SCI 〕 E 、 T ー C ⑨ AMERICAN 日本版 ダイジェスト Digest 09 2016 VOL46 No. 9 特集 爆発的に進化するディープラー ニンク 36 ヘージ Y. ヘンジオ ( 加モントリオール大学 ) 完全な自動運転車はできるか ヘージ S. E. シュラトーバー ( 米カリフォルニア大学バークレー校 ) スーバー A ー恐るヘし ? ・ 50 ヘージ S. ラッセル ( 米カリフォルニア大学バークレー校 ) 東大発ペンチャー プリファード・ネットワークスの挑戦 ・ 52 ヘージ 吉川和輝 ( 日本経済新聞 ) 人工知能 (AI) の研究開発が大きな盛り上がりを見 せている。研究が始まったのは 1950 年代半はで , これ まで何回か研究ブームがあったが , ここ数年のフームは 実社会への応用が本格的に始まった点が大きく異なる 脳の神経回路網の構造と働きを模倣した「ディープラー ニンク ( 深層学習 ) 」の手法によって , コンピューター は「知能」と呼んでもいいほとの能力を自ら育みつつあ る。チェスや碁の世界最強レベルの名人を破り , 人に代 わって自動車を運転したり , 応対したりする人工知能は いかにして実現され , これからどのような進歩を遂ける のか ? 4 本の記事で詳しく紹介する N コ 80D SIAVL 日経サイエンス 2016 年 9 月号
天体物理学 星の大爆発さまざま ほぼ 1 秒に 1 回 , 観測可能な宇宙のどこかで , 恒星が破滅 的な最期を迎え , その中には大爆発を起こすものも多い。夜 空に出現する超新星は星の大爆発の輝きだ。自動化された望 遠鏡で迅速な掃天観測が行われるようになり , 普通の超新星 爆発とはかなり様相が異なるタイプが多数発見されるように なった。普通の 100 倍も明るいタイプや , 逆に予想外に暗く , 爆発をほとんど起こしていないタイプなどがある。さらにつ い最近 , 光ではなく重力波を爆発的に放出する天体現象も相 次ぎ発見された。いわば重力波の。超新星 " だ。こうした様々 なタイプの超新星に関して , いくつもの理論モデルが提唱さ れており , 今後の観測によって検証されることになる。 超新星に新タイプ続々発見 58 へ→ D. ケイセン ( 米カリフォルニア大学バークレー校 ) 重力波の″超新星″も相次き発見 68 ヘージ 中島林彦 ( 編集部 ) p さ 08 WQ eD お当一 un VIS30VN dd コ一工 d 」 0 AS 山にコ 0 し バイオメカニクス 好記録へダッシュ ! 最速ランナーの秘密・ 72 ヘージ D. F. マロン (SCIENTIFIC AMERICAN 編集部 ) お待ちかねリオデジャネイロ・オリンピックの開幕が迫っ た。男子 100m で日本選手は初めて 10 秒を切るか ? ウサ イン・ポルトらトップ選手から世界新記録は出るのか ? 興 味は尽きないが , そもそも短距離走で好記録を出すためのカ ギはどこにあるのだろう。これまでは空中で下肢の位置を素 早く変えて次のステップをなるべく早く踏み出すことだとさ れてきた。だが , 米国のスポーツ科学者による最新の発見は , 足で地面を蹴る力の強さのほうが重要であることを示してい る。この力を生み出している要因と , どうすればそれを強化 できるかが , バイオメカニクス研究から明らかになった。米 国のトップスプリンターの訓練にも取り入れられている。 NOSIIM 亠出「 3 日経サイエンス 2016 年 9 月号
ーダイシェスト DIgest 神経科学 もどかしい謎が解決 痒みの科学・・・ 78 ページ S. サザーランド ( サイエンスライター ) 急性の痒みには , 虫や有毒植物を避けるよう警告する役割 がある。虫刺されなどお馴染みのケースでは , 皮膚で免疫細 胞が作動してヒスタミンという化学物質を放出している。し かし慢性的な痒みは , なぜかはっきりした原因なしに生じる ことが多い。近年に研究が大きく進展し , 痒みの分子メカニ ズムについて多くのことがわかってきた。ヒスタミン以外の 様々な痒み物質が特定され , それらをとらえる特定の受容体 , その受容体が存在する神経細胞の種別が判明した。痒みを専 門に感じるセンサーと神経経路の存在がはっきりし , 痒みと 痛みの関係も明確になった。急性と慢性の双方の痒みに対す る新たな治療法の開発につながるだろう。 言語学 騎馬遊牧民か農耕民か 語学バトーレ 印欧語族の起源をめぐって ・・ 84 ヘージ M. バルター ( サイエンスライター ) 区出」コ V ト S N くを 8 0 英・独・仏語にイタリア語 , ポルトガル語 , ロシア語 , ギ リシャ語 , ヒンディー語などなど , 世界人口の半数近くは「イ ンド・ヨーロッパ語族」に属する言語を話している。これら 各国語の共通祖先はインド・ヨーロッパ祖語という古代言語 だが , この祖語はいつどこで成立したのか ? 言語学者は長 らく , いまから 5000 ~ 6000 年前に中央アジアの草原地帯 から騎馬遊牧民が各地へ広めたと考えてきた。これに対し別 の仮説は , 約 8000 年前 , 現在のトルコあたりから農耕民が 農業とともに広めたとみる。旧来の言語学者と考古学者に加 え , 近年は生物学者と古代の DNA 解析の専門家が参入して 激しい論争を繰り広げているが , 勝負はついていない。 0 0 当コ一 N311V 日経サイエンス 2016 年 9 月号 4
公衆衛生 回復後もウイルス残存 ホスト工ホラ症候群 92 ヘージ S. ャスミン ( 科学ジャーナリスト ) 0 西アフリカのエボラ出血熱に終息宣言が出た現在も , 約 1 万 7000 人が「ポスト工ボラ症候群」と呼ばれる危機にある。 リべリアでの調査によると , 生還者の 60 % が目の問題を , 53 % が筋肉痛・関節痛を , 68 % が神経関連の問題を抱えて いる。原因として最も疑わしいのは , 隠れた残存ウイルスと 免疫系の過剰反応だ。血液検査でウイルスが検出されなくな った人も他者から避けられ , 再発の恐れにさいなまれている。 生体力学 合理的なバサロ泳法 クラゲの圧力遊泳術 98 ページ J. フィッシュマン (SCIENTIFIC AMERICAN 編集部 ) Z 山コ 9 を 00 区 0 山 クラゲは四六時中 , 餌を探して水中を動き続けている。遊 泳に費やすサイズあたりのエネルギーは海の生物のなかで最 も少なく , 効率的だ。いったいどのようにして ? 米国の研 究チームはクラゲの水槽に小さなビーズを浮遊させ , レーザ ー光で照らして撮影することで , クラゲの周囲の水流と圧力 を調べた。クラゲは自分の周囲に圧力の高い領域と低い領域 を作り出すことによって , この離れ業をやってのけている。 環境 究極の自然農法 土壌を肥やすヘレニエーション農法 100 ペ→ J. P. レガノルド ( 米ワシントン州立大学 ) J. D. グラバー ( 米国際開発庁 ) サハラ砂漠以南のアフリカは土地が非常にやせている。肥 料を施しても追いつかず , むしろ状態が悪化する場合もある。 そこで注目されているのが「ペレニエーション」という農法 だ。樹木やマメ科植物などの多年生植物を作物と一緒に植え ると , 作物を育てながら土壌の地カを再建するとともに害虫 を抑えられる。アフリカの多くの農家で好成績を収めており , 土地のやせた熱帯・亜熱帯の他地域にも生かせるだろう。 > 0N3 > 山 S 区山 QNVX 当く NOSO 工くエ D を > 一「 5 日経サイエンス 2016 年 9 月号
日経サイエンス Scientific American trademarks used with permission Of Scientific American, lnc. SCIENTIFIC@ AMERICAN 日本版 2016 Vol 46 No. 9 人工知能 脳の仕組みを真似たディープラーニング ( 深層学習 ) の研究が急進展 , 人工知能 (AI) が本格的に活躍する時代になった。その将来は ? 爆発的に進化するディープラーニング 036 Y. べンジオ 完全な自動運転車はできるか スーバー A ー恐るべし ? 050 S. ラッセル 東大発べンチャープリファード・ネットワークスの挑戦 超新星に新タイプ続々発見 D. ケイセン 普通の 100 倍も明るいもの , 暗いものなど天体爆発はバラエティに富むようた。 重力波の″超新星″も相次ぎ発見 中島林彦 最速ランナーの秘密 D. F. マロン 短距離走で好記録を出すためのカギがバイオメカニクス研究で明らかになった。 痒みの科学 S. サザーランド 様々な痒み物質とその受容体など , 分子機構の詳細が解明された。 語学バトル印欧語族の起源をめぐって M. バルター DNA 解析や進化生物学からの新たな証拠によって , 論争はむしろ激化。 ポストエボラ症候群 S. ャスミン エボラ出血熱から回復した生還者の多くが目や神経の障害にさいなまれている。 044 S. E. シュラドーバー 036 052 吉川和輝 天体物理学 058 天文学 058 068 バイオ メカニクス 072 神経科学 078 078 学 五ロ 084 092 表紙 人工知能 (AI) の急速な台頭は 社会に大きなインバクトを与え そうた ( 34 ヘージ「特集 : 人工 知能」 , 表紙イメージ : Tavis Coburn)0 公衆衛生 092 日経サイエンス 2016 年 9 月号 6
日経サイエンスホームページ www.nikkei-science.com 過去の主要記事ダウンロードは www.nikkei-science.net - へ . 別冊付録 「親と子の 科学の冒険 2016 」 親と子の 科学の冒険 クラゲの圧力遊泳術 土壌を肥やすべレニエーション農法 生体力学 098 J. フィッシュマン クラゲは物理学を利用することで極めて効率的に泳いでいる。 J. P. レガノルド / J. D. グラバー 多年生植物を作物と一緒に植えると地カを再建できる。 Front Runner 幇む 武部貴則 ( 横浜市立大物 再生医療研究のホープ iPS 細胞から臓器を作る 長倉克枝 ( サイエンスライター ) 国内ウォッチ 014 ・清潔すぎる実験用マウス ・最大級の研究船「かいめい」稼働 ・海水からウランを ・自ら磨け研究倫理 ・系外惑星の撮影に「スターシェード」 ・虹色セプラフィッシュ ・飛んで火に入らぬ街の虫 ・分野横断で科学技術の問題提起 ・幼児の認知道具セット ・ジカ熱対策オリンピック ・ニュース・クリップ ・京都賞は金出′本庶両博士ら ・病的な好奇心 ・オートフォーカス眼鏡 3 人に ・皮膚にくつつく日焼け止め ・高速で動く断層 環境 100 098 008 海外ウォッチ 020 NEWS SCAN 014 From Nature タイジェスト 砂漠の駝鳥 当世かがく考 ANTI GRAVITY 自然界の第 5 の力を発見 ? 028 東京五輪持続可能にするには 033 滝順ー 賢い。。賢さテスド 032 S. マースキー 貧困の病 030 食物多様性か減衰 091 ビリャード名人対グリフォン 104 坂井公 ニューヨークタイムズの数学』 瀬山士郎 ジャンク D 、 A 』 中西真人 連載森山和道の読書日記ほか タイジェスト サイエンス考古学 lnformation 次号予告 SEMICOLON 今月の科学英語 002 012 114 ヘルス・トビックス グラフィック・サイエンス パズルの国のアリス BOOK REVIEW 108 032 0 日本 ABC 協会加盟誌 ( 新聞雑誌部数公査機構 ) http ・ //www nikkei-science.com/ 7
印刷に回った悪夢を 2 回ほど見たことも。幸いそうした形の ミスは現実にはありませんが ( いまのところ ) , おふざけで なく真面目にやっていたのになお間違えた経験は , 残念なが ら少なからずあります。人工知能に負けそう・ ◆高度な仕事をやってのける人工知能はさておき , ペットボ トルのふたを開けて , そっと ( ←ここ大事 ) 差し出してくれ ◆アレルギーや乾燥肌のせいで日頃から痒みには悩まされ るロボットがいてくれたら・・・・・・。不注意で手を怪我してしま ているのですが , 「痒みの科学」 ( 78 ページ ) の編集作業 った私の本音ですが , ピンポイントで生活を介助してくれる では「痒」という字を入力すること 100 回以上 , そして痒 ロポットへの期待は想像以上に大きいのではないでしようか。 さを表現する言葉をひたすら考えていたせいか , いつにも さて , 9 月号恒例の特別付録「親と子の科学の冒険」をお届 増して体が痒くて仕方がありませんでした。いつもはメカ けします。動物園や水族館でのアニマルウォッチング , 身近 ニズムを知ると気分がすっきりするのに , 今回はこんな余 なアリを使った実験 , 天体観測 , ブックガイド , イベント情 計な神経系が進化してしまったことに怒りが増すばかり。 報など , 今年も盛りだくさんの内容。夏休みの自由研究や野 ところで外国ではいたずら用の「痒み粉」なるものが売ら ( 菊池 ) れているそうです。仕掛ける方は悪ふざけのつもりでも , 外活動にぜひお役立てください。 ◆駆け出しの新聞記者として「ニューラルネット」「バック 痒がりな人には許してもらえないように思います。 ( 笹川 ) プロパゲーション」「エキスパートシステム」などを盛んに ◆人工ニューラルネットワークの 1 つ , 再帰型ニューラル 取材したのは 30 年ほど前。携帯電話の普及前夜でインター ネットワークは作文や文全体の意味の推測 , 翻訳もできる ネットなど存在すら知りませんでした。今再びニューラルネ とか ( 42 ページ ) 。いずれ SCIENTIFIC AMERICAN の ットを用いた人工知能の記事を多く目にすると , その間の技 己事の翻訳・編集も , 人工知能が実行できるようになって 術文明の進展に改めて驚かされます。にもかかわらず脳がい その人工知能は , 編集作業を終 しまうのでしようか・ 。し まだプラックポックスであるのも驚きです。その仕組みが完 えた感想もこのセミコロンに書いてしまうのかも・・ 全に解き明かされ , それがコンピューターに移植されたらど ばらくは人工知能に仕事を奪われないことを願いつつ , ど んな世界が開かれるのかちょっと想像もできません。 ( 中島 ) んどん賢くなる人工知能に負けないよう精進していきたい ( 湯浅 ) と思います。 ◆記事のおふざけ仮タイトルがそのままの形で出版された というマースキーの告白 ( 32 ページ ) に笑いました。と 同時に , やはり気をつけなくては , とも。実は私もゲラ段 階ではこの手のおふざけ仮見出しをしばしばつけるほか , 誤訳とおぼしき箇所にとりあえず黒丸印「・」を入れて後 日に再検討という手をよく使います。そのゲラがそのまま セミコロン ( 神野 ) 0 一口 0 愛読者アンケートをウェブで行っています 皆様から誌面に関するご意見 , ご要望をいただくため , 愛読者ア ンケートを行っています。弊誌ホームページにアクセスいただき , 最新号のページから愛読者アンケートをクリックすると回答シー トが表示されますので , それにご記入ください。 URL : http://www.nikkei-science.com VICE PRESIDENTANDASSOCIATE SCIEN 引 F に AMERICAN EDITOR CHIEF: Mariette DiChristina PUBLISHER, MARKETING AND EXECUTIVE EDITOR: Fred Guterl BUSINESS DEVELOPMENT: Michael Voss MANAGING EDITOR: Ricki L. Rusting EXECUTIVE VICE PRESIDENT: SENIOR EDITORS: MichaelFlorek Mark Fischetti, 」 osh Fischmann, Seth Fletcher, Christine Gorman, PRESIDENT: Steven lnchcoombe Clara Moskowitz, Gary Stix. Kate Wong One New York PIaza, Suite 4500 ASSOCIATE EDITORS: New York, NY 10004-1562 U. S. A. Lee BiIIings, Larry Greenemeier, Dina Fine Maron, Amber WilIiams SENIOR REPORTER: David BiellO Copyright ◎ 2016 by Nikkei Science, lnc. All rights reserved. Some content ⅲ this 0 円 NION EDITOR: Michael D. Lomonick publication was previously published ⅲ PODCAST EDITOR: Steve Mirsky other languages by Scientific Americat1' lnc. or itS licensors, and iS used under license CONTR 旧 UTING EDITORS: 仕 om Scientific American, lnc. Katherine Harmon Courage, ・本誌掲載記事の無断転載を禁じます。 W. Wayt Gibbs. Anna Kuchment, SCIENTIFIC ・ RObin LIoyd, George Musser, AMERICAN Christie Nicholson. 」 Ohn Rennie scientific American trademarks used with CONTR 旧 UTING WRITER. Ferris 」 abr permission Of Scientific American' lnc. 発行人・編集部長竹内雅人 株式会社日経サイエンス 中島林彦 代表取締役社長 編集長 神野幹雄 竹内雅人 編集委員 菊池邦子 代表取締役副社長 湯浅歩 , 笹川綿子 David Swinbanks 編集協力 福田沙代子 , 青木貴保 澤田宏之 取締役 八十島博明 , 岸田信彦 MichaelFlorek デサイン 石川幸彦 , 井上大輔 Antoine E. Bocquet 堀内健一 営業部長 佐藤俊明 武田浩司 , 鬼頭穣 販売 監査役 峯尾ー弘 佐藤俊明 , 斧木悠子 広告 秋山博史 邑楽由美子 総務 経理 早川陽子 曽根康恵 WEB 〒 1 00-8066 東京都千代田区大手町 1 -3-7 代表 03 ( 3270 ) 0251 http://www.nikkei-science.com/ 日経サイエンス 2016 年 9 月号